第111回定例会
第6回
在香港日本国総領事 野田大使 他
開催日
11月23日(日) 10:00 ~ 19:30
開催場所
香港和僑会オフィス、香港サイエンスパーク他
参加者数
400名
第111回定例会 「和僑世界大会in香港 和僑会設立10周年記念大会」
【午前のプログラム】
香港を活動拠点としているお笑いコンビの 「ムコアンジー」 がステージに登場。香港にまつわるネタを披露しながら客先の皆さんに 「全員、隣の人と手を繋いでください」 と言うと、全員が手を繋いだのを確認して「今日も一日宜しくお願いします」。
続いて楢橋氏の司会で全員起立して国家斉唱「君が代」。香港政府観光局より「ライオンダンス」が披露され、続いて米山健一実行委員長より「20年後、50年後、和僑の礎にする和僑会にしたい」という開会宣言。
在香港日本国総領事館の野田仁大使より、日本政府の代表としてお祝いの言葉。「日本政府として、国力の向上が国と国民の課題です。日本への帰属意識、和僑会は出会い、競争、触れ合いの場。海外で活躍する日本人、海外で生計を立てている日本人、世界で高い志を持つ日本人に感銘と敬意を表します」(要約)
香港貿易発展局の古田茂美 日本首席代表からのビデオレターを披露。「世界の GDP の70%を占めていたアジアが、アヘン戦争の後に欧米に GDP のシェアを奪われ、戦後アジアが盛り返したのはその後日本の GDP が増えた為です。現在は華僑を含めアジア全体で GDP のシェアを取り戻しつつ、今後もこのアジアのシェアは増えると予想しています。華人の経済をつなぐのは華僑、日本の経済をつなぐのは和僑、世界に経済をつなぐ事に期待しています」(要約)
前日に行われた各国の和僑会の代表者会議について、香港和僑会の堀昭則事務局長から報告。和僑会の前会長の呼称を 「ファウンダー」 として、会長退任後も引き続き和僑会への尽力をお願いすることやブロック制を導入すること、新しい和僑会(準備室)を紹介。
和僑総会・香港和僑会の荻野正明会長による基調講演。テーマは「和僑会の未来」。そして各国・地域の和僑会の代表者紹介。その後、ステージから客席に向けてパノラマ記念撮影。
さて、今回の世界大会の開催に於いては実行委員や各担当以外に、25名の学生ボランティアの皆さんより協力して頂きました。この事は言葉に表して記録には留めませんが学生ボランティアの25人をステージの上で紹介する際に、事務局長の配慮で更に一言ずつ自己紹介をさせて貰った事は、これからずっと彼らの記憶に残ると私は確信しました。短い留学の期間中に和僑総会のタイミングで香港に居合わせ、ボランティアとして参加した事。若い和僑として総会のステージで緊張した思い出が自覚となり、彼らが将来海外で邦人に手を差し伸べる日が必ず来ると思います。
(文責:香港和僑会、執筆:香港和僑会会員 黒尾 登さん)
【午後のプログラム】
午後の部はイタリアンレストラン「Meraviglia Bar & Ristorante」で和僑世界大会のために特別に手配した飲茶を味わいながら、晴天に恵まれた屋外デッキであるいは室内のテーブルを囲み、皆でランチを和気あいあいと楽しんだ後、和僑ドリームプラン・プレゼンテーションで幕を開けました。
先ず、和僑ドリームプラン・プレゼンテーションの発表に先立ち、アントレプレナーセンターの川合径事務局長から、「ドリームプラン・プレゼンテーションは、10分間と言う限られた時間の中で、事業そのものの価値を語るのではなく、その事業が将来社会に広がったとき、どんな形になっているのかを、感動を呼び起こす夢をもって皆に語るものであります。故に、語っていただくのは、目標ではなく“夢”なのです」と、ドリームプラン・プレゼンテーションの主旨を伝えて頂いたあと、今回の和僑ドリームプラン・プレゼンテーションでそれぞれの大きな夢を3人のプレゼンターに発表して頂きました。
一番手のプレゼンターは、ブランド・ネーム海男児こと下荢坪之典(したうつぼ ゆきのり)さんです。下荢坪さんのドリームプランのテーマは「北三陸世界プロジェクト」です。テーマの副題が語るように、“~最大のピンチを最高のチャンスに変える!~”の不屈の精神が、日本のブランド「北三陸」を世界ブランドに育てる夢につながっていきます。
世界を舞台に仕事をするのが夢だった下荢坪さんは、そのような機会がある企業に積極的にアプローチしましたが、世間はそんなに甘くはありませんでした。しかしながら、実家の水産業の仕事だけは避けたいとの思いで、営業関係などを転々としましたが、本来本当にしたい仕事ではなかったので、仕事の意欲も徐々に落ちていき、仕事ばかりではなく家庭も崩壊に近い状況に陥ってしまいます。そんな切羽詰まった状況にあったとき、お父さんが病気で倒れ、一番したくなかった水産業の家業を継ぐことになってしまいました。仕方なく関わることになった水産業の事業も紆余曲折を経てやっと軌道に乗り始めた頃、あの2011年3月11日に起こった東北大震災で、無残にも跡形もなく津波の飲み込まれてしまいます。
多くの人たちの命を奪い、生活基盤まで奪ってしまった悲惨な災害の跡を目の前にし、生かされた命を活かすべく、海に育てられた下荢坪さんは、すべてを飲み込んでしまった海を憎むのではなく、海と再び生きていく大きな夢を育てる決意をしたのです。その夢が「北三陸世界プロジェクト」です。
2012年に立ち上げた「北三陸世界プロジェクト」の夢は、2025年には、1日たった3組の宿泊予約しか受け入れない「マリナーズキャンビン・ホテル」へと膨らんでいきます。日本に京都よりもっと素晴らしい場所がある。下荢坪さんは大きな声で叫びます。“北三陸だよ~!”
下荢坪さんの海と言う大自然と人間の営みに大きな夢を馳せた感動ストーリーに続いて、壇上に登場頂いた2番手のプレゼンターは、非営利団体『家-JIA-』(Joy in Action)の代表兼事務局長の原田遼太郎さんです。原田さんのドリームプランのテーマは、「“ワークキャンプ”がつなぐアジア~始まりはハンセン病」です。
原田さんが描いた大きな夢は、人として当たり前の生活を拒絶された人たちとこれから人として大きく成長していく若者たちを“ワークキャンプ”という形で、人と人との絆を結びんでいくヒューマン・タッチ な事業への取り組みです。壇上で語りかける原田さんの言葉には躍動とか飛躍を大きく描くシーンを思い浮かべることはありません。でも、原田さんの語りかける言葉、スクリーンに映り出される一つ一つの場面に大きな感動が湧き上がってきます。6人のボランティで始めた中国のハンセン病隔離村、リンホウ村で世間から見捨てられたように生きる年老いたハンセン病回復者とボランティ活動に参加した学生たちの人と人との触れ合いが、水のはった池に石を投げ入れた時に、音も無く水面に広がっていく輪のように、人々の魂を呼び起こしていく活動に広がっていきます。今は、学生たちばかりではなく、社会人も参加できる活動に広がっています。また中国の人里離れた隔離村から始まったこのワークキャンプは、いまは中国のみならずアジアでまだこのような隔離生活を余儀なくされている人たちにも活動の場が拡がっています。
原田さんの描く大きな夢は、中国・リンボウ村で出会ったハンセン病回復者から教えられたことを全世界に拡げていくことです。原田さんは中国に根を下ろし、この活動を全世界に拡げるために、人々の魂に呼びかけています。
原田さんの感動的なドリームプランに続いて、登場して頂いたのは本日3番手のプレゼンター、香港和僑会事務局次長、高橋正浩さんです。高橋さんのテーマは、「和僑の夢」です。
午前の部で、和僑会が産声を上げた10年前のことから今日の和僑会の姿、形について説明紹介がありました。10年間の月日を経て香港和僑会10周年を迎えるまでに至った今日、香港和僑会の筒井Founderや萩野会長が取り組んだ「和僑」と言う井戸堀りに、自分の人生の全てをかけて取り組んできた高橋さん「和僑の夢」が重なります。
高橋さんが「和僑の夢」に自分の人生を掛けようとした一番の動機は、世界で働くこと。そして、その世界で働く場のチャンスを香港で得たことです。しかしながら香港で、現地採用で仕事をしている中で、“本当にこれが自分の夢なのか?”と問いただす壁にぶつかりってしまいました。その時、自分な何をしたいのか、何ができるのかを考え、自分のあだ名が、「幹事」であることを思い出し、“そうだ、これを天職にして、総合夢商社を創ろう”。人を応援する仕事が、2004年に立ち上がった香港挑戦会につながっていきます。しかしながら、総合夢商社を形にするのはそう簡単なことではありませんでした。でも、経済的な苦境に立っても諦めない、屈しない固い決心が、高橋さんの描く「和僑の夢」に苦境を乗り越えながら近づいていきます。もし高橋さんの夢を諦めない固い決心がなければ、今日こうして私たちは香港和倭会創立10周年を迎えていることはなかったかもしれません。高橋さんの「和僑の夢」はまだまだ大きく膨らんでいきます。2020年、2050年、高橋さんの「和僑の夢」はどんな形になっているのでしょう。
今回の和僑ドリームプラン・プレゼンテーションの3名のプレゼンターの夢は、みんな感動ものでした。プレゼンテーションを聴いている人の中には、目頭に手を当てていらっしゃる方もいらっしゃいました。下荢坪さん、原田さん、そして高橋さん、素晴らしい夢と感動をありがとうございました!
続いて起業・経営相談室成果発表に移ります。
先ず最初は、和僑会起業相談の成果として、Happy Lab International, Ltd.の當真直美さんの発表です。テーマは、「Happy Lab編”Before & After”」です。當真(とうま)さんの起業テーマは、オーストラリアで展開している可愛いお菓子の販売事業を香港で新規事業として展開していくことでした。當真さん自身はリーテール(小売り)の経験もなければ、香港やアジアの市場についての知識も乏しく、手探りの中での起業となりました。不安は次から次と出てきます。 パートナーシップは大丈夫なのか、資金(お金)は足りるのか、自社店舗のみでの始めるのが良いのか、それとも卸業で。このように次から次と出てくる問題に相談に乗って頂いたのが香港和僑会の起業相談室でした。コストと利益の見通しなどの数値管理についても相談しました。また、和僑会のいろいろな会合に出席して貴重な情報収集を図ることができました。最後に何よりも心強かったのは、萩野会長の起業アドバイスです。
2014年1月11日に起業相談に伺ってから、実際に店舗を出せるようになるまでの数か月間で、受けた起業相談は、パートナーシップの選定で、流通関係から人材、不動産まで多岐に渡ります。またマーケティング・アドバイスでは、自分の会社をどうイメージし、表現するのか。資金については、いくら売らなければいけないのか、損益分岐点の確認など、経理・財務の観点からの検討。そして、Back-upとして和僑キャピタルの支援など、有意義なアドバイスや支援をたくさん頂きましたが、一番のアドバイスは、「やらないで悩むより、失敗してもいいから実行してみる」と言う、萩野会長の一言かもしれません。そして、ついに當真さんはピークグラリアのKIOSKに可愛いお菓子の店舗開業にこぎつけたのです。
起業相談成果発表の2番目は、Gracefair Company Limited の吉岡雅裕さんです。吉岡さんはi cremeria という世界ブランドへの挑戦で起業を目指しました。生まれが桐生ということで幼い頃から織物に関心がありました。学校を卒業すると、1994年にはANTEPRIMA Japan に入社。そして、2000年にはANTEPRIMA Italyに赴任し、2004年にはANTEPRIMA 香港に。2010年には、サマンサタバサ ジャパンに転職。そして、2014年には自分の経験の強みを活かして起業することを決心しました。
吉岡さんの強みはブランド・マネージメントと富裕層の取り扱いです。お客様に特別感を与え、海外赴任の経験を活かせる分野での起業を検討します。起業相談でアドバイスを受けた「オーシャンブルー」での事業展開を念頭に、ファッションからライフスタイルに視野を向け、イタリアで体験した高級スイーツに興味があったことから、小さな店舗スペースで事業を始められる、高級イタリア・スイーツの事業に焦点を絞ります。実際に店舗を構えるまでには、会社経営と起業との違い、すなわちお金に対する価値観の違いや、全て楽しんで仕事に取り組むことなど、基本的なアドバイスを頂きました。また、生産者との交流も大切な要素であることを教えて頂きました。手に届く夢は“目標”であって、“夢”ではないとのアドバイスで、吉岡さんはい2020年までに100店舗を作る夢にチャレンジしていきます。
3番目の発表は、経営相談の報告で、発表して頂いたのは、KANEZEN 香港の岡田善靖さんです。 岡田さんは、食品メーカーからかね善に移り、2011年のFood Expoに出展したのをきっかけに2011年7月に香港にKANEZEN HK を設立することになります。かね善は食品の商社として4,000点以上もの食品を取り扱っており、その内、黒豆・大豆の取り扱い量はNo.1を誇っています。かね善の魅力は、“社長の力”、すなわち人間を大切にする考え方が、社員の満足度や顧客満足度に反映されています。このような中にあって、和僑会の経営相談を受ける動機となったのは主に4つの点からです。 第一番目は、相談が無料であったこと。二番目は、相談役となって下さった萩野会長への尊敬。3番目は高橋さんのサポートと、そして4番目が、損益分岐点に達した後、どうするのか?です。
岡田さんが相談したことは、(1)企業方針について、(2) Innovationについて、(3)損益分岐点に達した後、どうすれば売上を10倍伸ばすことができるのか。このようなことを相談した答えが、(1) 企業方針としては食に関する多様なニーズに対応できる企業であること、(2) Innovationとは解決策(Solution)を考え、小さなInnovationの積み重ねが大事であること。そうして、こうした経営相談を通して得たことが、更に事業を伸ばしていくには、事務所を拡張し、実行していくという決意です。
午前の部で、萩野会長が基調講演で述べられました香港和僑が使命とする互助の機能、役目が、今日発表頂きました3名の方々の発表でより具体的に理解できたことを思います。
さて、このあとの午後のプログラムは、「白熱会議」と「模擬分科会」に別れて進行してまいりますが、「白熱会議」と「模擬分科会」については別のページにて報告いたします。
(文責:香港和僑会、執筆:香港和僑会会員 橘 桂子さん)