第1回起業塾
タイトル
第1回起業塾
開催日時
3 月 28 日 (金)
内容
「起業に先立って必要な覚悟」
① 起業に先立って必要な覚悟
起業をするということは、自助(自己責任)の世界に入るというとだから、それなりの覚悟が必要。通常の国家の社会には、自助―互助―公助という3つの「助」が存在している。
自助: 自己責任のこと。この感覚が非常に高くかつ優れているのは香港市民である。植民地時代に英国が、自国内で取っている社会保険などを中心とする各種の福祉・厚生政策を、植民地香港には適用しなかったという事実があり、要は英国がやるべきことをやらなかったという事実が生み出した副産物。健康保険、厚生年金、失業保険といった一連のWelfare政策を母国では採用したが、植民地の香港には採用しなかったのである。しかし、香港の人民はその結果、世界でもまれにみる「自助」精神の高い住民となった。
互助: 和僑会の理念であり、その完成を目指す「共助」の世界。その根底に流れているのは「利他」の精神であり、「慈悲」の感覚である。簡単に言えば、助け合いの精神。祖国を離れて外地で生活する和僑にとって、これは片時も忘れてはならない精神だろう。
公助: 政府(=国家)が設定し運用するセーフティーネットのこと。近代国家においては、健康保険、厚生年金、失業保険、生活保護と言った一連のセーフティーネットが設定され、ずいぶん多くの人々がその恩恵に浴していることは事実であるが、現在ほとんどの先進国でそういったWelfare?福祉・厚生政策?が破たんしかかっている。一国の財政が破たんするのでないか?というところまで追いつめられている国々も多くあり、その将来は人類最大の社会問題になる可能性としてとらえられている。しかるに、香港においては、これらのWelfare政策が重要視されていなかったため、非常に小さな形でしか香港政庁は関与していない。要は、それほどお金を使ってこなかったということであるが、そのため、香港の住民にとっては、そういう部分は「すべて自己責任の範囲内にあるもの」という風にとらえられている。このことは、英国の100年間の植民地時代を通じて、住民のメンタリティーの形成に大きな影響を与えてきた。
一般に、公助が大きくなれば、自助・互助共に小さくなってしまうと考えられている。香港においては、その公助が小さいために、住民の自助精神は非常に高い。ただし、互助の方はいまいちという印象が否めない。だから和僑会はその部分を埋めるべく、少なくとも会員の属する日本人社会においては、互助、利他、慈悲といった精神が、会員の方々の社会生活の基本となることを目指している。そして、同様の生活態度が、日本人社会から外に向かって放射されていくことを期待したい。
② 起業環境に対する理解。
香港で起業できない人、また起業したけれどうまく行ってない人は、社会制度に関する限り、世界中のどこに行っても成功するチャンスは少ないといって良いだろう。それくらい、制度的に香港という場所は起業に適しているのである。その主だった理由を列記してみると、下記のようになる。
‐ 起業の運営コストが他国に比べて低い: 例えば日本を例にとると
厚生年金
健康保険
失業保険
その他の社会保険
といった福祉・厚生政策により、各企業はその従業員と共に、社会保険の掛け金負担が義務付けられている。そしてその負担は、人権にに対して約23%にも上る。それに対して香港は、起業・従業員双方が給与の5%ずつを出し合う形でのMPFの掛け金、すなわち従業員の給与の5%が企業の負担である。この部分だけで、香港は日本の企業よりも対人件費18%の節約が可能である。
続いては消費税の有無が作り出す企業の運営コストの節約がある。日本は2014年4月1日より消費税を8%に増税し、2015年にはさらに上がって10%にするということになっているが、香港はゼロである。この違いを企業の運営コスト面で見ると経費の部分でほぼ丸々8~10%のコスト差が生まれる。すなわち香港の企業は日本と比べて、経費が8~10%少なくて済むということになる。
そして法人税、キャピタルゲイン(資本利得)、相続税、輸入関税等の税の問題が最後に出てくる。香港は法人税(16.5%)を除く他の項目に関する税はほぼゼロであるが、日本はしっかり税が課されている。また、法人税についても、香港の16.5%に対して、日本は地方税等を加えると、40数%に上っている。ただし、法人税は、利益が出ている企業にのみ課せられるものだから、赤字の会社に取って、法人税が低いと言うことは、何の意味もないことではある。
しかし、利益が出る会社の場合、香港では会社に巨額のお金が残り、それらは配当の形として株主に還元される。したがって、香港の株主の受け取る配当は、日本のそれとは比較にならない金額となる。だから、香港には、日本には見られない「寄付の文化」が存在する。日本の場合は、「公助」を大きくするために、歴代政府は民間の富を目いっぱい吸い上げつづけたのである。そして、そういうことが原因となって日本には「寄付の文化」が育たなかったのであり、逆に香港には寄付はしっかり根付いたのである。
③ 起業家に必要な精神
常に『Be innovative』ということを心掛ける。Innovation無くして「Blue Ocean」はないと言っても良いくらい、起業家にとって、「何をどういう風にやるのか?」は大切である。ただし、この Be innovative ということは、何も誰もやっていない「全く新しいこと」を指しているのではない。そういうのは見つけるのも、考え出すのも大変である。しかし、物事は少し角度を変えてみるだけで、ずいぶん違って見えるということを理解すれば、話は違ってくる。これからのビジネス社会では、これまで誰もやったことがないとか、売った人がいない、といった種類のものは、やはり利用されない、売れないから誰もやらないんだと考えた方が良い。少し目線を変えるということを、特にサービス面に絞って考えると、結構新しい考え方にたどり着くチャンスが多いように思っている。
居酒屋の運営 ‐ 店内にどうしたら『ホッとする』空気を充満させることができるか?
ECに挑戦する ‐ 基本はどうやってそういう商品を買いたい人にアクセスさせるかだが、Touch Pointをいかに構築するか?とか新しいロジテクに挑戦しているといったことも売りになる。一例として、町内・市内にはそれほどたくさんの顧客がいないので、店を開いても十分な売り上げが取れないが、全日本レベルで見ると、必要十分以上の顧客数がいる、といったビジネスはECに最適。
もう一つの精神というか心構えは、朝は一番やりたくないことから始める、である。どうしても人間は嫌なことから逃げようとするところがあるが、自分で事業をやっているということは、そういう問題からは逃げられないんだという認識が無くてはならない。
④ その他、必要な人、知識
‐ パートナーはいた方が良いと思う。できるだけ、自分とは考え方やタイプが違う人が望ましい。
- 必要な知識としては、やはり経理・財務に対する知識があった方が良い。通常は、仕事を続けて行くにあたって、避けて通れない分野なので、自然と身に着くケースが多いが、必要と感じたら、関連する本を読むなり、良く知っている人に教えてもらったりした方が良い。そうでないと、自分の会社が今どういう状態かすら解らなくなる可能性がある。