第4回起業塾 「M&Aについて」「人は失敗を重ねて成功する」
タイトル
第4回起業塾
開催日時
7 月 12 日 (土)
内容
「M&Aについて」「人は失敗を重ねて成功する」
前回のおさらい
1) 起業の形について、「小さく生んで大きく育てる」は起業も同じ。小さい成功の連続が大切。
2)「いかに食い繋ぐか」「いかに生き残るか」の毎日と理解すべし。カッコイイ社長は1年でパー。
3)「期間限定ビジネス」について
4)「Innovation」は難しくない。普通のことにどう捻りを加えるかだ。僕のやったいくつかの例。
5) 部下にチャンスを与え、共同経営者にすると、びっくりするほど働き始める。
さて、今日の話は次の通り;
① M&Aについて
商いを一人でこつこつやって行くことも悪くはないが、一つの考え方として、人が既にやってきたことを自分が引き継ぐというやり方をすれば、創業期の大変な苦しみが無い形で起業、または事業の拡大ができる。
例えば、面白そうな仕事をしている人がいて、でもよく聞いてみるとほとんど利益が出ていないという。でも自分ならこうするんだけどなぁ、という感じがするのであれば、M&Aの話をしてみる価値がある。そういう会社は、一から始めるより、もっと安いコストで買える可能性が高いから、じっくり考えてみる価値が十分にある。
世の中をよく見ていると、そういう案件が結構あることが分かる。理由は色々あるけれども、それらの理由の結果、オーナーが次のように考えているケースが結構多い。
もう年を取ったし、後継者がいないからやめたい。
これ以上何時までやっても今の状態の連続なら、もうやめた方が良い。
昔はそこそこ儲かったけれど、今は競合他社も増え、商売は毎年ジリ貧になっている。
そういう会社のオーナーは、何とかして会社を手放したがっているわけであるから、持って行きようによって、格安の値段、場合によれば「ただ」もあり得る。ただし、強欲であることは慎み、常にフェアであること忘れてはならない。問題は、そういう会社をどうやって立直すか?の考えと熱意を自分が持っているかどうかである。
そういう時に「Innovation」は必要不可欠の要素であるが、そのポイントは、常識的な考え方にどうやって少し「捻り」を加えるかということ。この「捻り」の部分が「Innovation=革新的な考え=人がやってないこと」である。M&Aによって取得した会社の運営、労務管理、商材、接客、サービス等に、そういう「捻り」を加えることができれば、成功する可能性はぐんとアップする。
M&Aにおける企業の売買価格について。一般に企業価値のことを「企業評価」または「会社評価」 という言葉で表しているが、この評価額の算出には、いくつもの方法がある。ここでは一番簡単な方法を紹介しよう。これは欧米で「ファッション・ブランド」などを売買するときに最初の目安として使われる方法で、それは直近3ヶ年の平均年間売上=その会社の評価というものである。これすごく簡単なんだけれども、結構実態に近い線であることが多い。ただしこの方法では、利益の出ていない会社の評価はこの方法ではできない。したがって、より正確の企業評価ということになれば、次の3つがある。
簿価純資産法 - 時価純資産法(EBITDA: Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Accrued expenses)
DCF(Discounted Cash Flow) 法
類似業種比較法(PERによる算出)
これらの詳しい説明については、別に時間を設けて話したいと思っています。
② 人は失敗を重ねて成長する
これ、当たり前の話だけれど、でも「失敗してもいいや」なんてノリで仕事をしていたら、首にならないまでも、「不真面目だ、態度が悪い」として上司から叱られるだろう。しかし、角度を変えて考えてみれば、失敗程人を強くし、大きくする経験はない。赤ん坊の成長を見ていても、まさしくそうである。経験ゼロでこの世に生まれてきた赤ん坊は、自分の失敗の経験と、母親の気配りの下で成長していくわけで、生まれた途端、何もかもわかっている赤ん坊なんている訳が無い。 起業をするということは、経営者としては赤ん坊だということである。とすれば、失敗を恐れていては成長しないということが、何となく判ってもらえるのではないかと思っている。どうですか?
将来、起業して何とか最初の難関を乗り切り、少し利益が出始めたとしよう。その「出た利益」をどう使うのか?の話をしたい。勿論、その時点まで直接・間接的に一緒に働いてきた人たちに少し報いたい、そして自分もちょっとだけ贅沢したい、いろいろ考えは出てくるけれども、一つのアイデアとして、出てきた利益の一部を将来の失敗を埋めるための「失敗枠」という形の予算にしてはどうだろうか。
僕は、新入社員の人たちに、「001 Licensed to make mistake!」と言い続けてきた。新入社員である1-2年の間に、できるだけいろんなことに挑戦し、失敗する経験を積むことは、その人の残りの人生に大きな影響を与えると思う。
大手企業の予算会議では、前年度の利益を勘案しながら、課・部・事業本部・会社全体という風に予算が設定され、それぞれの数字について、それらのグループの主体がその使い道をある程度は決める事ができる形になっているが、これまで「失敗枠」を設けたという話は聞いたことがない。日本の企業の硬直化の実例であろう。
③ 香港和僑会の考えている起業支援
「起業とは何か?」から始まって「起業のすすめ」、「起業に必要な心構えと準備」といった事をこれまで話してきたが、現実に「起業」した人たちは今、一体どういう状態なんだろう。詳しいデータは見つかりませんが、「起業後の結果」はあまり芳しくないようです。一般的に言って、100人が起業した場合、
中くらいの成功をする人が1~2名、
サラリーマン時代より幸せだと感じている、30名
サラリーマン時代と、ほとんど変わらないが、責任だけは重くなっているようだ、20~25名
何とか食っていけているが、できることならサラリーマンに戻りたい、20名
倒産・廃業に追い込まれた、23~29名
というのが大体のところかと考えられている。起業してよかったというのは31~2名だから、ざっと三分の一しかいない。しかも、中くらいの成功者になると、1~2%の確率となってします。それでも起業するのか?と改めて自問自答する必要がある状態である。香港和僑会が考えていることは、全体をもっとかさ上げできるのでないか?ということである。適切なアドバイスを提供することによって、やるべきでない起業を抑え、起業相談と和僑キャピタルの機能を使って諦めかけている起業の後押しをする。そして、起業後の会社運営についても「経営相談室」を通して状態をモニタし続け、不必要な落とし穴にはまることを防いだり、勝負の時を共に感じた入りすることによって、成功の確率を高めたい。
なぜ、そういうことが可能なのか?要は僕の頭にある何千枚か解らない「ジグソーパズル」のパネルと、皆さんの頭に入っている同様のパネルとでは、ぼくと皆さんの経験の差から生まれる違いが随分ある。勿論、一部のジャンルについてのみ見れば、ぼくのパネルよりも完成度の高いパネルを皆さんが持っていると言うことは十分あり得るけれども、しかし、事「起業」とか「経営」という部分に限ってみれば、ぼくのパネルの方が完成度が高いと言えると思う。すなわち僕には良いにつけ悪いにつけ結果が見えているのに皆さんには見えていないというケースがたくさんあるということ。そういう、経験からくる知識を活用することによって、案件の実行を中止するというようなケースも含めて、失敗を未然に防いだり、見落としていた成功の種を改めて検討することによる成功が可能になると思う。
そういった共同作業を通じて、香港和僑会会員の起業実績を高めたい。そして、全ての起業者の70%以上が、5年後の聞き取りの際、起業前より充実感がある、幸せだと思う、という形にしたい。また、失敗のケースにしても、どのようにEXIT(出口)を構成するかによって、最小の金銭的時間的・精神的・ロスで済ませることができる。そういう事は、決して不可能なことだとは、ぼくは思っていない。
ただ、最後の一歩はあなた方自身が踏み出さなければならない。